アメリカで音楽やる人は、「実家が太い」のか?

アメリカで音楽やる人は、「実家が太い」のか?

ホント〜に心外です、 よくあるSNSの「太い実家警察」。「事実」と決めつけることはないでしょ?!「大抵」と言われれば、「そうなのか」と思う人は多そうだし。

マイルス・デイビス様ですらそうなら↓、「ニューヨークで音楽続けられるのは、実家が太い人に決まってる」でしょうか?!

問題は、指摘がある程度は当たってること。アーティスト・ビザを取るにも、音大卒や音楽専門機関卒は審査にひときわ有利だし。申請に必要な推薦状を書いてくれる偉い先生の知り合いも、そこら中にいるでしょうし。

音大は、学費はもちろん、入学するまでのレッスンやら楽器・練習室にも高額が必要とか。その時点で、「太い」に当てはまる人が大半なのかも。

更に、渡米して新生活となれば、軌道に乗るまでは出費の一方。音大卒に限らず、親の支援があればラクラクでしょう。

https://youtube.com/watch?v=sLOaacx7fxs&feature=sharea

ただ、こういう恵まれた人↑の動画を見て「私もこの人みたいに頑張ろう!」と前向きになる人って、どれぐらいいるでしょう? (上記ツイッターXの”いいね”数↑を見れば、推して知るべし)

恵まれた人以外は「じゃあ、私なんかダメだなモード」に入るのでは??

ちょっと待って! それ、全然ちがいますから!!

「私が反論の生き証人です」と言えるほどの人間ではありませんが……。少なくとも親の援助なしに、↑YouTubeの女性と同じアーティスト・グリーンカードは取得してます。

じゃあ実家が細いのかといえば、それほどでもないのがまた問題! 単に、封建的な親が音大進学を許さなかっただけ。メジャーでレコーディングするようになった私のキャリアをけなし、妨害するような親でした。

それは恨みましたよ。でも最近、母から初めて聞いた話で、少し考えが変わったんです。

私の実家は、東京近郊のサラリーマン家庭。でいて、専業主婦の母が結構な小金を持っているらしいのは、不思議ではありました。

けど大学卒業後、東京で細々と自活する私に、一銭だって援助はありません。ある年の母の誕生日、予算がない私は駅でバラを一本だけ買い、(新幹線なんて無理で)普通列車で実家へ。

私からのプレゼントを手にした母は、愉快そうにこう言いました。

貧者の一灯って、このことね」

(注:貧しい者の心のこもった寄進は、金持ちの虚栄による多量の寄進よりも価値があることをいう)

そう言うからには、帰省のお小遣いでもくれるかと思えば、もちろんなし。その後、親になった私は、既婚の娘の生活に気を揉んで……。「お祝い」などとかこつけて、ちょこちょこと現金を渡して。(娘は私よりリッチなんですけど、つい)

そんな折には、いつもあの誕生日の日の母を思い出して、心の中で「どケチ!」と悪態をついてました。

ところが、最近お金の研究をしたいと思いたった私。まずは身近なプチ成功者から、と母に助言を求めてビックリ。母が投資などを始めたきっかけは、なんと金欠のためというのです。(てっきりお金が余ったからかと思ってた)

同族会社の長だった父方の祖父が、母には雀の涙の生活費しか渡してなかったそう。困り果てた母にたまたま財テク雑誌をくれた人があり、母は勉強を始めました。

バブルに向かう時代も良かったのか、母は何もしなかった人の何倍もの蓄財ができた模様。そんな経験から、母は「金銭援助は人を助けない」とのポリシーを持ったらしいのです。

それを知ってみれば、苦労ばかりと思っていた私の人生も、別物に見えてきます。食いっぱぐれる恐怖からスキルを貯めた結果、バンド活動の副業としてインタビュー通訳や雑誌ライターなどのレアな経験ができました。

結婚後も、グラミー賞アーティストや紅白出場歌手のスタッフとして、素敵な思い出がいっぱい。

余談ながら、音楽を志すなら、収入源のスキルは別に確保するのがオススメ。例えば、ダブルスクールのこんな女性もいます。

https://toyokeizai.net/articles/-/692026?page=6

もしも私に親からの援助があり、婚家も裕福だったとしたら……? 私は元来のんびり屋で怠け者なので、好みのお仕事ライフにできたかは疑問!

今までは逆で、「私だって他の人みたいに親(と夫)の理解さえあれば、もっともっとできたのに!」と歯ぎしり……。いいナと思うアーティストのプロフィールに有名音大卒のクレジットを見つけると、悔しさのあまり油汗が浮かびました。

なので、↑のような「実家太い」コメントを見かけると、めちゃめちゃ傷つくんです。援助はないわ、誤解されるわのダブルパンチ!

スッキリするための何気ないSNS発言が、どれほどの惨劇を生んでいるか。周知の事実だと思いますけどね。

それはともかく……。

金持ち=ラクとも、ラク=楽しいとも限らないのが、この世の面白いところ。ひろゆきさんのご著書にもありました。「激務で得た高給で美味しいかもわからない高級レストランに行くよりも、ユルく働いて確実に美味しい手料理を楽しむほうがいい」って……。

私の場合、5kg 100円ほどの特売ジャガイモだけを連日味変で料理していたのは、美味しい思い出。友人宅へのお持たせには、低予算で自作したジャムやケーキをオシャレにラッピングして喜ばれました。

せっかく援助があっても、レーベルからアルバムすら出せない音大卒。就労ビザなしの在米自称ミュージシャン。そんな人たちはフツーに多数派。反対に、援助がなければ悪知恵がバンバン働くし、懸命なあなたを応援したくなる人は多いはず。

どちらが良い・悪いではなく、どちらにもアドバンテージはあります。音楽やりたいなら、誰でも平等。

最後に……。

何で食っていようが、当人の勝手。今どき、どんなライフスタイルもアリでしょ? 実はご自分も「実家太い」が理想なだけだったりして?!